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「トラウマ」と「今」を体験すること

今朝の「ムムクシュ」、フローのクラスにご参加いただきました皆さま

ありがとうございました☆

今日お話していたクラスでのテーマを、

今回はちょっとまとめてみます。

 

先日ヨガニドラーのトレーニングコースの中で

挙げられた、

まず一つめの事例について。

一人暮らしをされていたご年輩のある男性。

定年退職後に、

少しずつ認知症の症状が出てくるようになり、

とうとう一人での生活が困難な状況になってから、

その方の娘さんという人が、一時的に同居をすることになったそうです。

同居当初、

表情の乏しくなった父親の姿を見た娘さんは、

おそらく今のご自身の状況に罪悪感のようなものを感じているように察して

「これまでたくさん、お仕事頑張ってきたから、

今はお休みしていいんだよー。

安心して、ゆっくりお休みしていいんだよ。」

と、繰り返し言葉をかけてあげたそうですが、

それからしばらくして、

時折笑顔も見られたり、認知症の症状が徐々に薄らいでいった・・・

そんな事例に関する

お話をしてくださいました。

ここで、脳生理学のお話が出てきます。

「海馬」という記憶に関係している場所と

「情動の脳」とも呼ばれる「偏桃体」。

不安や恐怖を感じ続けていると、「海馬」は萎縮し、「偏桃体」も損傷していく、ということ。

そして、成人の脳は新生ニューロンが作られ再生が可能であり、

その再生には、脳内ホルモンである「セロトニン」が関係している。

セロトニン放出を増やすために有効といわれること。

・朝日を浴びる

・リズム性のある運動

・腹式呼吸

・泣く

・まだ見たことのない景色をみる

色々ありますが・・・

「オキシトシン」という別名「抱擁ホルモン」「愛情ホルモン」などと呼ばれる物質によっても

セロトニン神経の活性化が促されることがわかっていて

こちらは、親しい人との触れ合い、タッチング、人が集まる幸福な場面においては

オキシトシンの放出が促がされると言われています。

繰り返し、近くにいる大切な人からの愛情を感じることで

委縮した海馬が少しずつではあるけれど再生し、偏桃体も徐々に鎮静化されていく。

そんなメカニズムがそこで起こっていたと言えるでしょう。

・・・というお話を伺いました。

最近、看護師をしているお友達からも、少し似たような話を聞いたことがあります。

老人ホームにご入居中の女性のお話で、

ある日お風呂に入った時、浴室で「そそう」をしてしまったことがあり

その日以降、入浴を拒否されるようになられたのと同時に

物忘れの症状が強くなったり、

時折介護のスタッフの方に突然暴言を吐いたり、手をあげたり、蹴とばそうとするなど、

暴力的な性格を表出する機会が増えてしまったのだそうです。

元々認知症に対するお薬は処方されていたので、

そのお薬の調整が必要かどうかの話も、担当医から出たりしたということでしたが

もしかしたら、不安や、自責といった感情が、

恐怖や孤独、怒りに転じてしまったのかもしれませんね。

不安や孤独、恐怖といったネガティブな感情が、

認知症を進行させてしまう。

進行を防ぎ、症状の緩和や回復を期待するために、

寄り添うこと、人の心の温かさを感じて安心できる環境、笑顔になれる時間、

そういった取り組みの意義について改めて再認識し、

穏やかな時には、

冗談を言ったり、とても素敵な笑顔を見せてくれるその女性にも、

言葉かけの工夫や、孤独にさせない周囲の環境の調整など、

できたらいいのかなぁなんて、お友達と話していたところでした。

「海馬」「偏桃体」というと、

トラウマのメカニズムにおいても関連の深い部位としてあげられますが、

ヨガニドラーのトレーニングの中で出てきた

もう一つの事例

関東大震災の被災者である、PTSDの症状を抱えた方の

こんなお話がありました。

波打つ海を見ただけで、

「うっ」って、苦しくなってしまう。

穏やかな波の海でも、苦しい過去はたった今のことのようによみがえり

心拍数と血圧が上昇し、

手足の末端は冷えていく、

恐怖と悲しみで取り乱し、

あるいは、身動きもできない…

身体的な変化を及ぼすほど、苦しくなる過去の体験を持つ方。

このケースの場合、

海を見ても、「苦しくならない」という体験を、繰り返していくことで

PTSDの症状が改善されていくそうです。

海を目の前にするとき、誰かがそばについている、とか。

過去の体験とは違う、安心できる海を感じる体験。

その海をみても大丈夫だと思える体験を重ねていくこと。

暗闇に対する恐怖があるのなら

暗闇にいても「大丈夫」だという体験をすることによって、

暗闇が平気になっていくように。

脳の「島皮質」という場所は、主観的感情体験に関与すると言われていて

体験したこと、およびその体験によって生じた感情はこの「島皮質」で情報が処理された後、情動の脳である「偏桃体」に作用し

記憶という機能をつかさどる「海馬」に刻まれて、

性格を変化させていく・・・

という脳生理学のお話もありました。

「体験」することで、自らが「納得」し、記憶の書き換えや性格の変化が生じていくプロセスですね。(^-^)

また、体のパーツごとを繊細に感じていく作業そのものが

この「島皮質」を活性化すると同時に、「偏桃体」(情動)を鎮静化させていく効果が期待できるそうです。

ヨガニドラーで用いる、体の各部位ごとに意識を向けさせていくインストラクションは、

ドイツの精神科医学者、シュルツ氏が考案した自律訓練法の方法論と同様で、

体の感覚を繊細に意識化していくことによってストレスや緊張をほどき、

深いリラクゼーションへと導いていく効果が期待できます。

(ちなみに、自身の体の各部位を意識化していく、ヴィッパーサナという瞑想法もあったりしますが・・・)

改めて、脳みそってすごいなぁと思うし、

ヨガニドラーを考えた古代インドの人たちもすごいですね;

ヨガのプラクティスの中で「体験」すること。

たくさんありますね(^-^)

深く息を吸った時の、胸が膨らむ感覚、

ウエストから、脇の下のあたりが伸びていく感覚。

股関節の左右差。

肩の凝り感。

体の左右のアンバランス。

痛みを生じる部位。

たくさん動いた後、呼吸が速くなっていく感覚。

バランスのポーズの時の、グラグラ揺れたり、もしくは筋肉が緊張する感覚。

チャイルドのポーズで、少しずつ呼吸が落ち着いていく感覚。

大切なのは

感覚を感じることと同時に、

それをコントロールするのが、他の誰でもなく自分自身であるということかな、とも思います。

体の声を聴いて、

自分の体がより心地よく感じられる方法を、自分で選択するという、一つの体験。

とても、大切ですね(^-^)。

そうやって感じたことはきっと、

これから先の、「より良い未来」へと影響していきます。

マットの上で感じ、気が付いたことは

普段の生活の中での心の癖に影響していきます。

脳の働きはとても複雑で、まだまだ知らないことがたくさんあるけれど

ここでまとめてみたことだけでも、

「体」を感じることが、「心」を感じることにつながるということ。

「体験」したことが、少しずつ「心」を変化させていくということ。

人と人との繋がりや、愛情を感じることが、

安定して穏やかな心を作るために、欠かせない要素であるということ。

ヨガは、

そういったことに気付き、自分自身を知り、

かつ癒していくための、良いツールになってくれる・・・

と言うことも言えるかなぁと、思います。

自分自身を通して知りえたことを

誰かに伝えることで、私自身が癒されているなぁと、

最近、私が特に感じていることです。

もうちょっと、お金があったらいいのになぁ。

時間があったらいいのになぁ。

お友達と遊びに行く時間がほしいのになぁ。

疲れてるなぁ・・・・・

色々あるけれど;

ともにヨガの時間を過ごす人がいること、一緒に感じたり、笑ったりすることができる誰かが近くにいること

ありがたいなぁと、思います(´▽`*)

昨日も、一昨日も、ともにヨガのクラスの時間を過ごしていただいた皆さま。

本当に、ありがとうございました☆